merlot_milliat’s diary

競馬について書こうと思っているブログ。

2021-10-24 いくつもの縁に捧げる 菊花賞

第82回菊花賞(GⅠ)は42年ぶりに阪神競馬場で施行された。

3000mはどの3歳馬にもはじめての距離。気合をつけてハナを奪ったのは4番人気のタイトルホルダーだった。そしてそのままペースを握る。

 

タイトルホルダーは、私が2021年のクラシック三冠競走でずっと応援し続けた馬であり、同じくずっと応援しているメロディーレーンの半弟である。この姉が340~350kg前後と小柄な馬体でありながら立派なステイヤーで、2019年菊花賞に出走し5着と健闘した。

姉弟の生産牧場である岡田スタッドの代表、岡田牧雄氏は「一番使いたいのは菊花賞」だと弥生賞優勝後のインタビューに答えていて、私もずっと期待していた。三冠競走は皆勤賞で、皐月賞は2着。菊花賞トライアルのセントライト記念では包まれてしまい13着に終わったが、けがはなくメンタルへの影響もないということだった。

 

最初の1000mが60秒、少し早いか。残り1000m、3コーナーでタイトルホルダーに後続が追い付いて、セファーラジエルとの差は4分の3馬身。4コーナーを曲がり、直線に向かって全馬スパート。

おかしい、タイトルホルダーと他の馬との差がどんどん開いていく。

牝馬ディヴァインラヴが伸びてくる、残り200mを切る、ステラヴェローチェとオーソクレースが追ってくる。

「しかし残り100です!」

あと100mでは絶対に追いつけない。

結局タイトルホルダーは5馬身差をつけて、阪神3000mを逃げ切った。

 

戦績を眺めて改めて思ったが、タイトルホルダーは新馬戦以外、メインレース(11レース)ばかりを7戦走っていた。

昨年末のホープフルステークス(GⅠ)では4着で、優勝したダノンザキッド、2着だったオーソクレースに負けていた。しかし、報知杯弥生賞ディープインパクト記念(GⅡ)ではのちにNHKマイルカップ(GⅠ)を制するシュネルマイスターやダノンザキッドを相手に横山武史騎手の手綱で逃げ切り重賞制覇。名に恥じない称号を手に入れた。皐月賞では横山武史騎手が優勝したエフフォーリアに騎乗しており、タイトルホルダーは3馬身差の2着。日本ダービーではシャフリヤール、エフフォーリアに突き放され6着。セントライト記念では13着に終わる。

14時から16時の間のみ、ほぼテレビ観戦の私でもほぼすべてのレースを観戦することができた。だからこそ思い入れも強くなった。

 

生産牧場の代表、岡田牧雄氏は前日放送されたウイニング競馬のインタビューで「心肺機能がすごく優秀なので逃げてほしい」とおっしゃっていた。そのとおりになったし、こんなに鮮やかに勝つところまで想像されていたのだとしたら……。

 

オーナーの山田弘氏は、母のメーヴェ、姉のメロディーレーンにも共有馬主にならないかという誘いがあったというが、出資は見送っていたそうだ。ドゥラメンテの共有馬主でもあったことから初年度産駒を所有したいと探していたところ、タイトルホルダーがセレクトセールに上場することを知り、2000万円で落札した。ここまでの成長、レースの走りを見て、どんなにうれしかっただろう。

 

栗田徹調教師は、皐月賞前のNumberの取材で母・メーヴェ栗田博憲厩舎の調教助手時代にみていたこと、母を見ていた事を知ったオーナーが「せっかくの縁だから是非」と預けてくれる運びとなったことを話している。ずっと心肺機能の高さを評価してきたし、初の輸送も金曜日に行うことで乗り越えた。クラシック初勝利の準備はできていたのかもしれない。

 

横山武史騎手は皐月賞に続き、菊花賞を制覇。GⅠ初勝利から半年で2勝目を挙げた。まだ22歳と若く、勢いがある。父・典弘騎手がセイウンスカイ菊花賞を勝利したときと同じ逃げ切り勝利だったことも話題になった。お手馬にはエフフォーリア、ウインマリリンがおり、今後はタイトルホルダーのライバルに騎乗することも考えられるが、ぜひまたこの人馬で思い切りのよいレースを見せてほしい。

 

最後に、父・ドゥラメンテは2021年8月31日にこの世を去った。タイトルホルダーは初年度産駒ではじめて重賞を制覇した馬であり、出走がかなわなかった菊花賞を制した。ここでは父と子で三冠、と言わせていただく。

 

このようにいくつもの縁で繋がる馬だから、菊の花を捧げるのにふさわしい陣営が勝利したと思うのだ。